二百五十円弁当の憂鬱
ある日。
俺は腹が減ったので、近所の二百五十円弁当を買うことにした。
(消費税を入れると、確か263円だったか?その時点で詐称だ)
その日は体調が悪く、家で自炊する気になれなかったからだ。
弁当屋の看板には、全品二百五十円と銘打っていて、
店内には意外なほど弁当の種類があった。
作り置きの弁当が正面と左右の棚に積み重ねられていた。
俺が店に入っても、
店員から、いらっしゃいませの一言もなかった。
奥の炊事場でなにか洗いものをしているようだが、
俺に気が付かないわけは無かった。
まあ、そんなものだろうとしか、そのときは思わなかった。
ほとんどの商品が肉の加工品だった。
俺はその中で、天ぷらを見つけ左側の棚からそれをとり、
店のおばさんに渡した。
俺が手に取った左側の棚の弁当だけ、飯の上におかずが載っていた。
店のおばさんは、濡れたままの手を拭こうともせずに、
そのまま俺の弁当を掴んだ。
爪が黄土色に変色し、奇妙に曲がっていた。
おばさんは
「三百円になります」
と言った。
俺は驚き、二百五十円の弁当にしますとおばさんに告げた。
おばさんはそんな俺に、さらに追い打ちをかけてきた。
「そこにちゃんと三百円と書いてあるんですけどね!」
俺は左側の弁当の棚をみた。
棚の前のところに、
小さな紙切れにマジックで、確かに三百円と書いてあった。
俺が値段を見過ごしたのがいけない。
おばさんはそう言っているのだった。
今までの俺ならば、ここで店を後にしただろうが、その日の俺はいつもと違った。
不躾な店員の態度に耐え、俺は目の前の棚の、
唐揚げ弁当を手に取りおばさんに渡したのだった。
それで弁当を買って終わりのはずだった。
しかし、
そうはならなかった。
おばさんは、俺から金を受け取り、おつりを渡し、弁当を袋に詰めながら、
さらに言わなくても良いようなことを口にした。
「三百円の弁当の方が絶対に得なんですけどねえ。わたしならそっちを買うねえ」
さすがに俺はむっとした。
それでも、そのまま店を後にし車に乗り込む。
俺は客だよな?
商品が、たかだか二百五十円の貧乏臭い弁当だとしても?
なんであんなことを言われなければならないのか?
弁当屋のおばさんの、
おもしろくなさそうな、
不満に満ちたあの目。
俺の中に次第に怒りが充満し、ついには言葉となって車内に溢れ出した。
「くそったれババアが!」
俺は車の中で吠えた。
それで十分だった。
俺はすぐに平静を取り戻しハンドルを握ると、家へ向かった。
帰宅し、
弁当を開け
食った。
思った通り。
そいつは案の定、不味かった。
俺は腹が減ったので、近所の二百五十円弁当を買うことにした。
(消費税を入れると、確か263円だったか?その時点で詐称だ)
その日は体調が悪く、家で自炊する気になれなかったからだ。
弁当屋の看板には、全品二百五十円と銘打っていて、
店内には意外なほど弁当の種類があった。
作り置きの弁当が正面と左右の棚に積み重ねられていた。
俺が店に入っても、
店員から、いらっしゃいませの一言もなかった。
奥の炊事場でなにか洗いものをしているようだが、
俺に気が付かないわけは無かった。
まあ、そんなものだろうとしか、そのときは思わなかった。
ほとんどの商品が肉の加工品だった。
俺はその中で、天ぷらを見つけ左側の棚からそれをとり、
店のおばさんに渡した。
俺が手に取った左側の棚の弁当だけ、飯の上におかずが載っていた。
店のおばさんは、濡れたままの手を拭こうともせずに、
そのまま俺の弁当を掴んだ。
爪が黄土色に変色し、奇妙に曲がっていた。
おばさんは
「三百円になります」
と言った。
俺は驚き、二百五十円の弁当にしますとおばさんに告げた。
おばさんはそんな俺に、さらに追い打ちをかけてきた。
「そこにちゃんと三百円と書いてあるんですけどね!」
俺は左側の弁当の棚をみた。
棚の前のところに、
小さな紙切れにマジックで、確かに三百円と書いてあった。
俺が値段を見過ごしたのがいけない。
おばさんはそう言っているのだった。
今までの俺ならば、ここで店を後にしただろうが、その日の俺はいつもと違った。
不躾な店員の態度に耐え、俺は目の前の棚の、
唐揚げ弁当を手に取りおばさんに渡したのだった。
それで弁当を買って終わりのはずだった。
しかし、
そうはならなかった。
おばさんは、俺から金を受け取り、おつりを渡し、弁当を袋に詰めながら、
さらに言わなくても良いようなことを口にした。
「三百円の弁当の方が絶対に得なんですけどねえ。わたしならそっちを買うねえ」
さすがに俺はむっとした。
それでも、そのまま店を後にし車に乗り込む。
俺は客だよな?
商品が、たかだか二百五十円の貧乏臭い弁当だとしても?
なんであんなことを言われなければならないのか?
弁当屋のおばさんの、
おもしろくなさそうな、
不満に満ちたあの目。
俺の中に次第に怒りが充満し、ついには言葉となって車内に溢れ出した。
「くそったれババアが!」
俺は車の中で吠えた。
それで十分だった。
俺はすぐに平静を取り戻しハンドルを握ると、家へ向かった。
帰宅し、
弁当を開け
食った。
思った通り。
そいつは案の定、不味かった。