雨滴 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

雨滴

父親の車のバックシートに身を沈め、

ぼくは窓に張り付いて輝く、

無数の雨滴を、

ぼんやりと眺めていた。


父と母。

そしてぼく。


当たり前の事のように思っていた幸せ。


それでもいつかは終わるに違いないと、

ぼくは気付いていた。


空を見上げると、鉛色の雲が切れ切れになって流れ、

雲の切れ目から淡い光が差し込んでいた。


すべての安息と、

すべての不安と、


そして、

しばしの幸せと。


すべては雨滴の中に蠢く微生物と同じだった。


ぼくらは、小さな雨粒の中で生かされている。


そう、

かりそめの命なのだ。

それでも、


輝いている。


きっと、

輝けるさ。