かわいそうな
早朝。
会社の通用口を出る。
外はまだ濃厚に、夏の香りがした。
深夜勤務から解放され、放心状態で駐車場を歩いていると、
携帯にメールの着信があった。
娘の母親からのもので、
九時には家を出ろとの約束は、
絶対に忘れるな、というような内容だった。
俺はそんな辛辣なメールに、
今までとは違った感慨を覚えたのだった。
過去に、娘の母親に対して抱いていた感情とは、
怒りだったり、
恐怖だったり、
憎しみだったり。
しかし、
そう言った感情は今は無く、
俺は何故か、娘の母親が酷くかわいそうに思えてならなかった。
何故なのだろう。
何としてでも、俺と娘を引き合わせたくないのはもちろんの事、
自分自身も、俺と会いたくないと言ったような、
ある意味、ひどく子供じみたその所行に?
別れた後、他人となった俺に対して、
今も変わらずの憎悪を抱くその妄執に?
俺は空しくもなり、また、娘の母親のどうしようもない屈託を感じ、
そして、
娘の事を思った。
娘の母親の、負の感情。
その矛先が、娘に向かわなければよいのだが。
なんてこった。
結果、
俺は夜勤明けに家に帰る事が出来ずに、
そのまま車でぶらぶらするはめになった。
マクドナルドでバーガーとコーヒーで時間をつぶす。
それから車の中で仮眠し、
家に帰る頃合いを待った。
暗くなってから家に帰る。
娘の母親が買った、三種類の運動器具はそのままだった。
予想通り、ファンヒーターが無くなっていた。
ソファーがそのままだったのは、有り難かった。
猫も、そのままだった。
厄介なものは置いて行く。
俺も。
猫も。
そして、
ブラウン管のアナログテレビも。
人生の主従関係。
もう終わったのだ。
安心しろ。
そう。
もう、終わったのだ。
会社の通用口を出る。
外はまだ濃厚に、夏の香りがした。
深夜勤務から解放され、放心状態で駐車場を歩いていると、
携帯にメールの着信があった。
娘の母親からのもので、
九時には家を出ろとの約束は、
絶対に忘れるな、というような内容だった。
俺はそんな辛辣なメールに、
今までとは違った感慨を覚えたのだった。
過去に、娘の母親に対して抱いていた感情とは、
怒りだったり、
恐怖だったり、
憎しみだったり。
しかし、
そう言った感情は今は無く、
俺は何故か、娘の母親が酷くかわいそうに思えてならなかった。
何故なのだろう。
何としてでも、俺と娘を引き合わせたくないのはもちろんの事、
自分自身も、俺と会いたくないと言ったような、
ある意味、ひどく子供じみたその所行に?
別れた後、他人となった俺に対して、
今も変わらずの憎悪を抱くその妄執に?
俺は空しくもなり、また、娘の母親のどうしようもない屈託を感じ、
そして、
娘の事を思った。
娘の母親の、負の感情。
その矛先が、娘に向かわなければよいのだが。
なんてこった。
結果、
俺は夜勤明けに家に帰る事が出来ずに、
そのまま車でぶらぶらするはめになった。
マクドナルドでバーガーとコーヒーで時間をつぶす。
それから車の中で仮眠し、
家に帰る頃合いを待った。
暗くなってから家に帰る。
娘の母親が買った、三種類の運動器具はそのままだった。
予想通り、ファンヒーターが無くなっていた。
ソファーがそのままだったのは、有り難かった。
猫も、そのままだった。
厄介なものは置いて行く。
俺も。
猫も。
そして、
ブラウン管のアナログテレビも。
人生の主従関係。
もう終わったのだ。
安心しろ。
そう。
もう、終わったのだ。