まいったね。ここはアメリカか? | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

まいったね。ここはアメリカか?

夜勤はとんでもない。

人間は、


暗くなると寝るように出来ているということを、

俺は嫌というほど思い知らされた。


だからなのだろう。


日中に寝られる訳も無かった。


三時間、いや、四時間、寝たか?



目覚めると仕事の時間だった。



飲み物すら買う金がなく、

俺はペットボトルに水道水を注ぎ、

そいつを二つばかり袋に詰めた。


会社に行けば冷蔵庫で冷やせる。


休み時間までには、十分冷えているだろう。


一度仕事場に入れば休憩時間まで、

小便をすることすら出来ない。

いや、

というより、小便をしに行くやつなどいなかった。


夜の街。

二車線道路。

俺は車を走らせる。


追い越し車線をゆっくり走る軽自動車。

俺と並ぶように走っている。

後ろにはトヨタのでかい車がぴったりと張り付いていた。


俺は少しだけ速度を落とす。

追い越し車線が空くと、

ものすごい勢いでそいつが飛び出し、

俺の隣に並んだ。


視線を感じ、

隣の、俗にいう高級車に乗っている若造を見た。

ヒップホップスタイルを狙ったのだろうか、

首に何かぶら下げている。

田舎者丸出しだった。


若造も俺を睨んでいた。


俺は微笑んでやった。


一瞬、若造の顔が歪み、

次の瞬間、俺はとんでもないものを見た。


若造は、

まるでハリウッド映画に出てくる、

死亡フラグバリバリのギャングのように、

俺に中指を突き立てて来た。


なんてこった。

笑かしてくれるぜ。



「映画の見過ぎだ、まったく」


俺はやつのテールタンプを見やりながら、


呟いた。



なんだかおかしくなって、


俺も車の中で、中指を突き立ててみる。


その行為は、

一瞬だけ、


俺にエミネムを連想させた。


農耕民族顔には似合わない。

こんなことは。


馬鹿げてる。



俺は大げさに首を振ってみた。

ハリウッドの二枚目がよくやる、あれだ。


当然の事だが、

その行為も、


俺にはまったく似合っていなかった。