詩「見えるものと、みえないもの」 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

詩「見えるものと、みえないもの」

机の上に、

いつも同じ本が置いてあった。


そいつを開いてみる事はほとんどなく、

いつでも読めるという安心感さえあればそれで良かった。


今日、

手に取ろうと思ったとき、


そんな本は元々無かった事に気付いた。


勝手にでっち上げられた記憶か。



みたいものと、


みたくないもの。



それは人の都合で決まるに違いない。


いつも見えているはずの鼻の頭だって、


ひとは勝手に見えないことにしてしまう。




視界が揺れた。


立ち上がり、水を飲むために台所へ行く。


くもりガラスが輝き、


外が晴れている事を知る。


本当の俺は今何をやっているのだろうか?



精神を病み、


孤島の隔離病棟で、

ロボトミー手術を受け、


交代勤務の職についていると、

妄想しているだけなのかも?


いつかはよくなるだろうという、

この想いも、


現実逃避のために作り上げられた、

ただの妄想かも?




どうしようもない不安と恐怖。


現実には存在しないそれらが、


俺を苦しめている。


苦痛自体、

妄想だよね?



さてと、


仕事の時間だ。