図書館 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

図書館

楽器屋をまわったが、


俺の捜し求めるものは、なかった。


指一本で弾ける弦楽器。


そんなものがあったとは。


ギターで弾き語りをすることが俺の夢だった。


しかし、


俺は弦をうまく押さえられなかったのだ。


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楽器屋を三軒まわってもなかったということは、



買うな、ということだろう。


家に帰れば、挫折して触れることがなくなった、


フォークギターが、押入れで眠っている。





俺は家に戻る途中でレンタル屋により、


店内を物色する。


何故か全作品十円レンタルだった。


マイレージマイライフは、全て貸し出し中だった。


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こんな日には、

とんでもなく、ダウナーな映画がいい。



俺はリービングラスベガスを手に取った。


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明日から仕事だ。


いきなり頭の中の大部分を、その言葉が埋め尽くす。


最悪だ。


畜生め!




地獄だ。


掃き溜めだ。


豚小屋だ。




俺はもう力尽き、


何かを考えることができなくなった。


希望なんて、持てなかった。



家にまっすぐ帰ることもなく、


俺は図書館へ車を滑り込ませた。



聖書。



手にとってみた。


何たることだ。


中身は辞書のようになっていて、


フォントも格調高く、読みにくかった。


俺は聖書の解説書を二冊ばかり引っ張り出し、


ついでにブコウスキーも借りた。


冷房の効いた館内で、


薄い方の解説書を開いてみた。



物欲は現世でも、天国でも、人を幸せにしないとあった。


俺は気に入った。


まるで仏教みたいじゃないか。



俺は今、図書館でこれを書いている。



隣に座っているガキに我慢ならなかった。


このガキは、昔からここの常連で、


いつも奇妙な声をあげ続ける。


どうしようもなく目障りで、うるさかった。



今も、


やたらと咳払いをし、


独り言をいい、


カツカツと足でリズムを取り、


はなはだうるさい。



注意してやろうか。


怒鳴りつけてやろうか。




俺は頭の中で、


ガキを怒鳴りつけ、


むなぐらを掴み、


部屋から叩き出すところを夢想した。



それはほとんど、


実際にやっているかのような気分だった。



俺の苛立ちは消えてしまった。



そして、


ガキの物音も、消えていた。




さてと。


飯でも食って帰るとするか。


もう、


たくさんだ。

こんな一日は。