詩「明け方観た、夢」

夢。
思い出せなかった。
二度寝する前、
面白い夢を観ていたが、
夢ノートへ書き取る前に、
霧散した。
忘れる前に書き写せば良かったものを。
冷蔵庫から梨を一つ。
半分に、
四分の一に、
八分の一に、
そして、
皮を剥いて、口に放り込む。
すべての動作が、
細かく切り取られ、
俺はそれを人ごとのように、
眺めていた。
まるで映画だった。
ばりばりとという音が聞こえた。
「くそったれが!」
猫がまたもやカーペットで爪を研いでいる。
「ちゃんと爪研ぎでやれって何度言ったらわかるんだ!」
猫の腰のあたりを引っぱたくと、
参ったとばかりにころりと床に這いつくばり、
ぐるぐると鳴き声をあげた。
くそったれ猫め。
それでも、
あまりのかわいさに、
俺は猫を抱き上げ、
無理矢理頬擦りをする。
くそったれ猫の、
ぐるぐるが止まった。
思い出せない夢。
そして、叶えられない夢。
どちらも、
ここにないという意味では、
同じようなものだった。