幻覚か、それとも? | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

幻覚か、それとも?

今日、娘とその母親と、見知らぬ男が乗り合わせた軽自動車を、俺は見た。

俺の車はその場を一度通り過ぎたが、確認するため車を方向転換させて、

コンビニに停まるその車へ向かった。


広い駐車場の一番奥の、三台並ぶ車の真ん中にその車はいた。


近寄って確認する事は出来なかった。


車がコンビニの駐車場へ曲がる前まで、

その車は俺の車の真後ろを走っていたのだ。

ルームミラーに映るその女は、どう見ても娘の母親だった。

信号で止まったとき、俺は一度振り返り、女の顔を確認しようとした。


その直後、車はコンビニへ曲がったのだ。



運転席の男は長身でやせていて、

車の中で野球帽を被っていた。


助手席と運転席の間から顔を出していた子供は、

娘とは輪郭がまるで違っていて、どうにも娘には見えなかった。

人違いに決まっていると思う反面、そうであるという確証も欲しかった。

俺はコンビニの駐車場で止まり、その車を遠くから観察した。

中の人影が、こちらを見ているように思えた。

俺はなんだか怖くなって、その場を立ち去ったのだった。



これも幻覚なのだろうか?


娘に会いたいという願いが募っていた。

娘の母親に何度電話しても、

メールしても、

返事は無かった。


連絡があったのは、

娘の母親名義で発行されたクレジットカードが、

いつのまに手続きをしたのか、

俺の口座から引き落とされるようになっていたらしく、

未決済の連絡が来ているから、金を入金しろという文句と、

自分の車の保険代を俺に払わせようと説得するための電話の

二回だけだった。

こちらからの電話にはまったく反応がなかった。


まったくもって、何だって言うのだ。


いろいろな考えが頭の中を駆け巡り、

ある結論へと帰結する。


娘の母親が、何故あれほどまでに性急に、

離婚手続きを勧めたかったのか。

俺ははっきりわかったような気がした。


それでも、怒りは湧いてこなかった。



ただただ、娘の母親が怖いと思った。



俺は、娘に会えればそれでいい。

娘に会えないこの現状が、辛すぎるだけなのだ。