けなげさに泣いた〜借りぐらしのアリエッティー | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

けなげさに泣いた〜借りぐらしのアリエッティー

その日。

目覚めると頭痛だった。

おまけに、三日前から左足が晴れ上がり、歩く事もままならなかった。

窓の外からバイクの音が聞こえた。

250CCの四気筒。

聴けばわかる。


足は何とかなりそうだった。

頭痛も、起き上がれないほどではない。

二時過ぎまで、天井を眺めて過ごし、俺は起き上がった。


いつものショッピングモールへ向かった。


建物の中にあるシネコンへ行き、映画の券を買った。

たった三百円の違いだったが、俺はそれを惜しんで、レイトショーの時間帯にした。

上映まで五時間以上あった。

食料品売り場で八十八円の酎ハイを二本買い、

フードコートで丼を食いながら、その二本をあけた。


少しだけ頭痛は和らいだようだったが、

酒を喰らったせいか、足は逆に痛んだ。


本を読み、うつらうつらし、

また目覚め、本を読んだ。


映画は八時四十分からだった。




髭は伸び放題で、汚いジーンズにTシャツ姿。

そんなオヤジが、アニメを観ようなどと、ちょっと笑えるかもしれないな。

劇場へ入ると、

案の定、オヤジなど独りもいなかった。



カップルや、

若い女の子たち、

レイトショーのせいか、

家族連れはいなかった。


俺は何故、こんなメルヘンチックなアニメを観ようなどと考えたのだろう。


このアニメは、小人の話だった。

軒下に住み、人間からものを少々借りて、暮らしている。

とんでもなく切ない話だった。

蛙にすら食われてしまう小人たち。

あまりにも脆く、儚い存在。


十四歳になった少女が、

父親と二人、ほとんど命がけで、角砂糖とティッシュを「借り」に、

軒下から人間のいる階上へと向かう。

少女のけなげさ。

父親の愛情。

それを見守る母親。

俺はその時点で泣いてしまった。

なんてこった。

見ていられなかった。


その小人たちは、

父親と母親、

そして、

娘の三人家族だった。



俺は最後まで泣きながら、小人たちの話を観る事になった。


小人の少女と心を通わす人間の少年も、

両親は離婚し、その母親と離ればなれに暮らし、重篤な病人でもあった。



ここが作るアニメは、

ユーモアがふんだんにちりばめられているのが特徴の一つだが、

今回はそれも押さえられ、

静かで、

なんだかとても美しい物語だった。



映画が終わり、

ぶり返した頭痛でこめかみを押さえながら、

俺は帰路についた。