金縛り~それは夢から始まった | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

金縛り~それは夢から始まった

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俺は学生時代に一度だけ、金縛りにあったことがあった。

それ以後、金縛りに遭うことは、二度と無かった。

いや、これから先、あるかもしれないが。





金縛り。

それは夢から始まった。


何故か俺は、夢の中で目覚めた。

この時点で、かなり異常な夢ではあった。

夢の中の夢。

夢の二重構造。

しかし俺は、夢だとは思っていなかった。


俺は寝床から起き上がると、開け放たれた窓から、階下を眺めた。


俺の部屋は二階だった。

電柱に取り付けられた外灯が、緑色の光を放ち、闇から路面を浮かび上がらせている。

静謐で、どこか不穏だった。

案の定、白い陰のような、異形の者たちが現れた。

ゆっくりと歩いてるのだが、残像が尾を引き、手や足があるのか、それとも無いのか、

顔があるのかすら、判別できなかった。

階下の車道を徘徊する異形の者たちが、次々と集まってくる。

次第に何かの意志に従うように、一つの方向へ向かって歩き始めた。

俺は驚愕した。

異形の者たちは、俺の部屋を目指しているのだ。


俺はドアへ急ぎ、鍵が掛かっていることを確認すると、ドアから数歩下がった。



ドアノブが、ゆっくりと廻った。


異形の者たちが、大挙して、ドアの外に集まっていることは、明白だった。


ガシャガシャガシャ。


ドアノブが音を立てる。

俺は恐怖のあまり、悲鳴を上げた。

しかし、声にはならなかった。

俺はそのショックで夢から覚めた。

目覚めた俺を、最初に襲ったのは、大音量の耳鳴りだった。


がんがんがん、がんがんがん。


鼓動に合わせ、耳をつんざくような耳鳴り。

その異常さと、夢の衝撃。

体は金縛りで、ぴくりとも動かない。

まるで何かに押さえつけられたような、圧力を全身に感じた。

俺は目を開けることが出来なかった。

目を開ければ、何かが俺をのぞき込み、あざ笑っているに違いないと思えたからだ。


俺は眼を硬く閉じたまま、体を動かそうと全身に力を入れた。

次第に、耳鳴りが遠退き、体の自由が戻ってゆく。


金縛りから完全に解放されると、俺はゆっくりと眼を開いた。


夢で見たように、窓は開け放たれていた。

起き上がり、階下を確認する気にはなれなかった。

俺は恐怖におののき、階下の友人の部屋へ転がり込んだのだった。


あれは夢だったのか?

それとも現実か?

一つだけ確かなことは、実際に金縛りにあったということだった。


夢と金縛りとの関連性は?


夢の中の、異形の者たちは?


夢か、それとも幻覚か。


全ては闇の中だ。



いや、違うな。



全ては……


夢の中、か。