現実に、侵食する悪夢 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

現実に、侵食する悪夢

冗談だろう?


俺はわが身の感覚を疑った。


これは現実なのか?


それとも、夢か?



慄然としながら、俺は辺りを見回した。





俺はその日の晩。


こんな夢を観た。



奇妙な部屋だった。


薄汚れた、木造住宅の一室。


まるでお化け屋敷だった。


壁に貼りめぐらされた板は、煤のようなもので黒く汚れていて、


やはり薄汚れた木の箱が、床にいくつも置かれている。


廃屋同然だった。


正面に、棚がすえつけられていて、その中に古いテレビが置かれている。


ガラス製の引き戸で、テレビは収納されていて、


それでも、映し出された映像は良く観えた。


白黒の映像が流れていた。


戦時中の映像だろうか?


旧日本陸軍と思われる男の画像が流れている。


ここはいったいどこなのだ?



俺は不安に襲われた。



そして、信じられない光景を目の当たりにする。



箱の中から、皮膚がしわだらけの死人が、複数這い出だしてきた。


凝然としながら、その光景を見やる。


ゾンビどもが、部屋中を埋め尽くし、俺はこの現象の元凶を、


何故かはっきりと、理解していた。



テレビに映る、男の映像。


こいつが首魁だ。



俺はどうしようもない恐怖に、身を震わせた。



途端、ゾンビどもはいなくなり、俺は部屋にうずたかく積もったごみの中に、埋没していた。


俺は仰向けに寝ている。


紙くずや、わけのわからないごみの類。


外からかすかに日の光が入っているようだ。


寝たまま、ごみの中で左手を動かしてみる。


何かが左手に当たった。


それを握り、ごみの中から引っ張り出す。



なんなのだ、これは??



それは、切断された人間の左腕だった。



薄緑色の、手術着の断片が腕にまとわり付いている。


血痕が、まばらに散り、まだ固まってはいなかった。


?????


誰の腕なのだ?


ここは、誰の部屋なのだ?



ああ、ここは俺の部屋、だよな?



衝撃とともに、俺は目を覚ました。



と、その瞬間、俺の頭から右頬にかけて、何か白いものが、撫でてゆく。



あ、がががっ。



声にならない悲鳴を上げ、


俺は跳ね起きた。


枕の周りを手で探り、自分の頭に触れてみる。


明らかな、触れられた感覚が、確かにあった。


そんなばかな。


夢に違いないとは思ったが、頭から頬にかけて、まだその感覚が残っていた。



もう一度、辺りを見回す。


何かが、上から物が落ちるはずもない。


その痕跡もなかった。


あれはいったいなんだったのか?




俺はしばらく、呆然としたまま、眠ることが出来なかった。



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