最近観た夢三編~第三編 「まとわり付く、女」
夢三編最終話。
ここに完結。
その日の晩、俺はこんな夢観た。
突如として、見知らぬ女が俺の背後から覆いかぶさり、
抱きすくめられた。
その女は何故か、俺の腹の肉をつまみ上げ、こう言うのだ。
「ほらあ、こんなにお肉付いちゃって、もう」
俺はオッサンだが、腹など出てはいなかった。
ただ、腹の肉をつまもうと思えばつまめる。
その程度の肉は付いている。
普通の人間ならば、そうだろう。
体脂肪率ひと桁の人間ならば、腹の肉など、つまめないだろうが。
その女はいったい誰なのだろう。
俺が真っ先に抱いた疑問が、それだった。
少しふくよかで、愛嬌のある顔をしている。
年増女だった。
よく観ると、娘の幼稚園の先生に、似ていなくもない。
しかし、別人だった。
誰なのだ、という疑問は一瞬のうちに、消えた。
単純に、女に抱きすくめられること自体が、快感だった。
少なくとも、このおばさんは、俺に好意を抱いているに違いなかった。
その証拠に、俺の腹の肉を摘み上げたのだ。
恋人同士だって、そんなことするか?
何もしないまま、すでに口説き落としたも同然だった。
俺は、この後のことを考え始めていた。
このおばさんと、良い仲になりたかった。
女体。
俺はその感触すら、忘れかけていた。
これから、それを取り戻すのだ。
期待と微かな興奮。
その衝撃が、いけなかった。
俺は夢の中で、何も成し遂げられないまま、目を覚ました。
