お前は普段、娘に何を言っているのか?
義母、娘の母親と、娘。
そして俺。
久しぶりの外食だった。
義母の奢りで、とんでもなく高い飯を、レストランで食わせてもらった。
なんて美味いんだ。
俺は、半年、いや、一年ぶりに、外でうまいものを食った。
飯を食い終わり、帰り、車まで歩く。
そのとき娘が、その母親に、奇妙なことを言った。
「おとうちゃんと、手を繋いでもいい?」
娘の母親は、何も答えない。
そんなことを、わざわざ母親に訊ねて、了承を得ようとする子供がいるものか?
俺は、なんともいえない気分になった。
俺はそのとき悟った。
娘の母親は、娘に対して、俺のいないところで、とんでもないことを言っている。
父親と触れ合うことに対して、承諾を得なくてはならないようなことを、
このくそったれ母親は、娘に刷り込んでいる。
俺は、寂しいような、もう、どうでもいいような、絶望的な気分になっていた。
俺は、この家族の、人間ではない。
完全に、他人だ。
しかし、いまさら驚くほどのことでもない。
俺の娘の母親は、徐々に俺を攻め上げ、緩やかな絶望へと、
地獄へと送り込もうとしている。
体調は最悪だった。
自宅へ帰り着くと、俺は車に乗って薬局へ行った。
金はなかったので、クレジットカードの使える薬局だ。
このままの体調では、働くことなど出来はしない。
一刻も早く、体調を元通りにしなくてはならないのだ。
薬局で、風邪薬を探す。
面倒くさいので、店員に訊ねた。
俺は店員の選んだ薬と、どこのメーカーだかわからない栄養ドリンクを買い、
店を出た。
明日、働けるのだろうか。
ふと思ったが、働く以外にないことを、俺は知っていた。
這ってでも、働く以外にない。
他人同然の、くそったれ娘の母親のために。
それは、もはや奴隷の心境だった。
虚しさ以外、俺の心の中には、何もなかった。
疲れました。
もう。
どうでもいいや。
