詩「僕の願い」
君は僕の手を、やさしくさすりながら、
温泉に行った事や、
遊園地に出かけて、喧嘩した事や、
君のお父さんが僕を嫌っていたが、
今回のことは、大いに同情していること、
そして、
今も僕を愛していること。
外は夕暮れなのかな。
視界の隅に、オレンジ色の日の光が差し込み、
天井に長い影を引いている。
人工呼吸器の音が絶え間なく病室に響き、
僕は動かなくなった腕を、動かそうとして苦笑した。
心の中で。
僕がこうして意識があることすら、君にはわからないだろう。
私の言っていることがわかる?
ある日君は、泣きながら、僕に言った。
僕はそのとき、二度、瞬きをした。
~僕の願いを聴いておくれ~
お願いだから。
僕の願いを、聞いておくれ。
数ヶ月が経ち、
ある日、君は酷く錯乱し、人工呼吸器のスイッチを切ろうとした。
すぐに看護士が駆けつけ、君をスイッチから引き剥がした。
「この人は、こんな状態で生き続けたいなんて、思っていないんだから」
そのとき僕は、二度瞬きをした。
そう。
君なら、僕の願いを叶えてくれそうだった。
