阿呆は放っておけ!
頭痛薬が手放せなかった。
バイトが終わる頃。
痛みはさらに増し、吐き気がした。
俺は痛みに耐えるしかなかった。
帰宅し、薬を飲む。
今、この場所に水は無かった。
水を買う金も、ない。
俺は家路を急いでいた。
みんな気違いみたいに、車を飛ばしている。
何がそんなに気に食わないのか?
俺は普通に、自分のペースで走った。
遅くも無く、速くも無く。
車を運転していると、鼻水が出てきた。
右手で鼻を擦ると、人差し指が真っ赤に染まった。
鼻血だった。
前方を見ると、二車線がひとつになっている。
俺はそのまま、車線の収束点へ進む。
前の車がひとつの車線に入った。
今度は俺の番だった。
俺は右手を見て、車の間に入り込もうとした。
すると、コンパクトカーに乗ったおっさんが俺の方を見て、手を振っている。
狂ったように。
自分の前に入れといっているのだろう。
俺はそう思った。
しかし、おっさんは前方のトレーラーとの車間を、空けようともしなかった。
逆にぴったりと着けて。
ひょっとすると、入るな、と言っているのか?
おっさんは益々、車の中で激しく手を振っている。
俺は呆れて、窓を開けて、おっさんに声をかけた。
「いったい、何なんですか?」
おっさんは、皺だらけでサルのような顔をしていた。
「めい一杯前まで行け!でないと、割り込みになるじゃないか!」
おっさんの前の車は、どでかいトレーラーで、すでにそのトレーラーの前には車が入り込んでいるところだった。
俺は呆れかえってしまった。
俺は窓を閉めた。
狂ってる、な。クソじじい。
おっさんの後ろに入ろうとしたが、今度はおばさんがすました顔で車間を詰めて、俺を入れようともしなかった。
俺は仕方なく、その後ろに何とか入り込んだ。
さらに頭痛が酷くなった。
路肩に止めて休もうかと思ったが、それをやると、仕事に間に合わなくなる。
少しだけ、猿じじいのことを考えた。
微かな怒りが沸いてくる。
まったく、馬鹿馬鹿しい。
阿呆らしい。
俺はそれ以上考えないことにした。
「阿呆なんだから、放っておけばいいじゃないか」
呟いてみたが、どうもすっきりとしなかった。
いっその事、猿じじいを怒鳴りつけてやればよかったのか?
まあ、どうでもいいことだ。
世の中、つまらない事が大半で、楽しいことなど、小指の先ほども、ありはしないのだから。
↑いつもクリックありがとうございます。
