詩「二両目の女」 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

詩「二両目の女」

君にはじめて出会ったのは、ある春の、二両目の列車のなか。

ポニーテイルに、ピンク色のシャツに、ミニスカート。

何か嬉しそうに、携帯を開き、微笑んだりしてた。

朝日が君の唇を輝かせる。


天使が君を祝福してた。


僕は毎日、君の列車に乗り、君の隣に立った。

夏。

君の肌が、小麦色にかわり、ノースリーブの肩からのぞく水着の跡。

少しだけ、派手になったんじゃない?


君は、天使に愛されていた。


秋が香る季節。

いつもより遠く、街が広がって見えた。

君は酷く落ち込んでいるようだった。

携帯を開く事もなく。

茫洋とした視線を、秋風がさらってく。

ミュージックプレーヤーを耳に入れ、時々眼をとじたりして。

そのとき僕は見たんだ。

君の頬を伝ってゆく、涙を。

僕は君の、ミュージックプレーヤーの、曲目表示を盗み見た。


ハナレグミ。

さらら。


翌日から。


二両目の、いつもの場所で、君を見かけることは、二度となかった。


そう。


天使は君を連れてったんだね。