くそったれ!東京 後編 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

くそったれ!東京 後編

俺は上野駅に立っていた。



日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。-20090910.jpg



地方から東京にやってきた人が、ここに集まる場所である。


そういう事実が、俺の見方も変えたのだろうか。


すれ違う人々全員が、俺と同じ田舎者のように見えた。



ビジネス街のど真ん中に屹立する高級ホテルより、俺は上野駅の方が、落ち着けた。



駅の中を歩くと、立ち食い蕎麦屋があった。


かけ蕎麦の値段を見て、俺はちょっとだけがっかりした。


牛丼一杯分の値段だった。



なんてことだ。



かけ蕎麦は、やめにした。



そのまま駅を出て、ガード横の路地を歩いていった。


カード下を覗くと、露天の一杯飲み屋が、何件も並んでいる。


まだ、昼間なのに、何人ものアウトローたちが、酔っ払っていた。



俺も飲みたかった。



しかし、酒を飲むほどの金は持っていなかった。


小銭をかき集めて、400円。



どうしようもなかった。



途中、牛丼屋で、カレーを食った。


290円だった。



残り110円。



俺はなんとなく、公園の方へ歩いていった。



日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。-20090910.jpg


人もまばらだった。


まともなやつは、ほとんどいなかった。


公園の、木にもたれかかって、消沈する人々。


端の方で、日差しも気にせずに、段ボール一枚で寝っ転がるおっさん。


俺の方まで、気分が悪くなってきて、おっさんの隣で寝てしまいたいくらいだった。



公園をぶらつきながら、出口を探した。



出口のところで、老人が似顔絵を描いていた。


恐ろしく上手かった。



モノクロで、二千円。


カラーで三千円。



赤ん坊を連れた主婦が、似顔絵を描いてもらっていた。


赤ん坊は、泣き続けていた。



しかし、



絵の方は、笑っていた。



どうしようもなくなって、俺は駅に戻ることにした。


俺はホームで、列車の到着を待っていた。



とにかくもう、うんざりだった。



上野公園で、打ちひしがれたホームレスたち。


彼らにあって、俺にないもの。


俺にあって、彼らにないもの。



多分、俺よりたくさんの自由はあるに違いなかった。


(ひょっとしたら、俺より金を持っているのかな?)


俺らが寝っ転がる傍らを見逃さなかった。



500mlのチュウハイが、何本も転がっていた。



喉が渇いてきたので、自販機に歩み寄る。


俺は苦笑した。


手持ちの金。


後、十円足りなかった。