詩 「朝焼け」
彼女はいつも、誰もいない病院の非常階段から、外を眺めてた。
心地よい風が吹き、かすかに金木犀が香った。
ある晩、彼女はこっそりと、病室を抜け出し、彼の元へ行った。
やあ。
彼はそれ以上何も言わなかった。
透けるように白い肌と、幾分やつれたその表情は、
彼女の闘いの凄まじさを、物語っていた。
彼女は家族もなく、ひとりぼっちだった。
海までドライブしましょうと、彼女は微笑んだ。
助手席で眼を閉じた彼女は、まるで死んでしまったかのようだった。
ラジオから流れる、タイムアフタータイム。
それから、チェインジザワールド。
彼女の頬をつたって、流れ落ちたもの。
彼は彼女にこう言った。
朝焼けだよ。
彼女は答えない。
彼は彼女の頬に、そっと触れた。
彼の手に、彼女の手が重なる。
そのまま導かれた手が、彼女の唇に触れた。
唇の動き。
あなたが好きよ、と声もなく、唇が語った。
心地よい風が吹き、かすかに金木犀が香った。
ある晩、彼女はこっそりと、病室を抜け出し、彼の元へ行った。
やあ。
彼はそれ以上何も言わなかった。
透けるように白い肌と、幾分やつれたその表情は、
彼女の闘いの凄まじさを、物語っていた。
彼女は家族もなく、ひとりぼっちだった。
海までドライブしましょうと、彼女は微笑んだ。
助手席で眼を閉じた彼女は、まるで死んでしまったかのようだった。
ラジオから流れる、タイムアフタータイム。
それから、チェインジザワールド。
彼女の頬をつたって、流れ落ちたもの。
彼は彼女にこう言った。
朝焼けだよ。
彼女は答えない。
彼は彼女の頬に、そっと触れた。
彼の手に、彼女の手が重なる。
そのまま導かれた手が、彼女の唇に触れた。
唇の動き。
あなたが好きよ、と声もなく、唇が語った。
