現代の奇跡 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

現代の奇跡

俺はその奇跡の恩恵に与っている。

幸せなことだ。



世の中、様々な薬物が、法律的に禁止されている。


精神変容によってもたらされる、様々な犯罪。

服用者にもたらす、健康被害。

常習性。

その他、もろもろ。


驚いた事に、程度の差はあれ、近い作用をもたらすものが、町で普通に売られている。

俺はソイツを毎日のように(買う金があるときは)やっている。


ソイツを決めている間は、全てがうまくいっていると思い込むことが出来たし、これから先、明るい未来が約束されているような気分にさえなれた。

コイツさえあれば、そのときだけは、うんざりするような事は忘れられる。

魔法の液体。

一生涯、手元に置いておきたかった。


そう。


ソイツは、酒だ。


コイツが禁止されないのは、もはや奇跡と言っていいだろう。

飲酒運転による人身事故は後を絶たず、酒の飲み過ぎで家庭崩壊なんて話は腐るほどある。

酔って暴力を振るい、相手を殺めてしまうことすらあるだろう。

また、そこまでには至らないにしろ、コイツのおかげで肝臓をやられ、治療に支払われる人々の医療費は、いったいどれほどのものになるのだろうか。

酒による経済的損失は、甚大なように思える。


同じ嗜好品のタバコの場合、公共の場や職場などから徹底的に締め出しを食っている。

近い将来、世界から完全に抹殺されかねない勢いだ。

しかし、煙草を吸って人に暴力を振るうなどと言う話は、聴いたことがない。

俺は、喫煙者に同情を禁じ得ない。


酒が、覚醒剤などと同様に、禁止されてもしかたがない、とすら思えてくる。

(酒と、覚醒剤などの薬物による経済的損失。果たしてどちらが上なのか?)

しかし、そうはならない。

多くの人間が飲むため、多額の、理不尽なまでの税金が、簡単に徴収出来るのだから。


古代ローマだかギリシャだか忘れたが、酒を食らってふらつている神様の彫像があったっけ。

神も、酒を飲んで忘れたくなるような事があるのだろうか。


とにかく、楽しむことだ。

酒が自由に飲める奇跡に乾杯。

そして、ほどほどに。