彼女が逝った日
川村カオリ。
彼女の歌を始めて聴いたのは、スキー帰りの車の中だった。
とんでもなく暗い詩と、切な過ぎる歌声に俺は完全に魅了され、翌日には彼女のCDを買っていた。
それはデビュー作で、ZOOというタイトルだった。
彼女は、超絶的な歌唱力で歌い上げるタイプではなく、むしろその逆のように思えた。
しかし、何故だろう?
その歌声は、俺の心に深く突き刺さり、長い余韻を残したのだった。
俺はそのときから、音楽に大切な何かを悟った。
歌や演奏が上手いなどという、テクニック以外の、何かを。
それからずいぶんと後になって(つい最近)彼女のエッセイを書店で見かけた。
子供時代に壮絶な虐めにあい、学校へ行かなくてすむようにと、自ら両腕を折ってしまったという。
そんなバックボーンがあのどうしようもない切なさを、俺に感じさせたのだろうか。
彼女の歌に想いを巡らす。
こんな歌を、彼女は歌っていた。
ライオンや豹に、頭下げてばかりいるハイエナ。
俺はハイエナになど、なりたくはなかった。
しかし
気付いたら、ハイエナ以下だった。
獣のクソをかき集めて、後ろ向きに転がす虫。
なんていったっけ?
その虫の名前は?
最後に、謹んで、川村カオリさんのご冥福をお祈り致します。
もっとも好きな曲
Sweet Little Boy