肉塊〜バイトの話 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

肉塊〜バイトの話

とてつもなくでかい肉の塊が、一つずつビニールに包まれ、山積みになっていた。

俺の仕事は、そいつのビニールを剥ぎ取り、余分な血を拭うことだった。

楽勝だと思った。

そのときは。



一つの肉の固まりは、ゴールデンレトリバー一匹分はあった。

そいつを持ち上げ、台の上に載せ、ナイフでビニールを切り、ひっぺがし、液体(血)を拭った。


この仕事が終わると、肉をぶった切る作業にまわされそうだった。

だから、ゆっくりとやった。

こっちの方が、楽だろうと思えたからだ。

「これも、お願いね」

肉の塊は、また、元の山の高さになった。

それから、時間まで肉の山が低くなることは無かった。

手袋は血だらけで、肉を持つ時に、滑ってうまくいかなかった。

エプロンも、返り血で汚れていた。

腰もヤバくなってきた。

何匹分のゴールデンレトリバーを、俺は上げ下ろしたのだろうか。

腰を痛めないように注意した。

左肘が痛みはじめる前に、終わるのか?

山積みの肉塊を見て、俺は思わずため息をついた。


グロテスクな、何か別の物体。


まはや、目の前の肉塊は、俺にとっては食い物ではなかった。


筋力トレーニングのためのバーベル。

これからは、そう思うことにしよう。