バイトの面接、再び
バイトの面接。
仕事は、老人ホームでの飯作りだった。
駐車場に車を止め、建物の入り口まで歩くなか、ラードの匂いが漂ってきて、俺はそのとき空腹を意識した。
と同時に、老人たちも揚げ物を食うのかと、妙に感心した。
エントランスから、2本の廊下が平行に走っていて、一方は食堂に通じ、もう一方は湯と書かれた暖簾があり、風呂場に通じていた。
驚いた事に、床屋の看板もあった。
俺は、エントランスのソファーで待った。
テーブルの上には、老人たちが作ったと思われる人形やら、折り紙やらが並んでいた。
食堂を覗いた。
そこは、老人たちで溢れかえっていた。
昼食の時間だった。
しばらくすると、頭の先からズボンまで、ピンク色の白衣で身を固めた女が現れた。
頭巾とマスクの間から、目だけが覗いている。
美しいのか、醜いのかすらもわからなかった。
ただ、俺よりは確実に若かった。
俺は、椅子から少しだけ身を前に乗り出して説明を聞き、仕事に対しての興味と熱意を表そうとした。
事実、飯作りには、興味も情熱もあった。
俺のエントリーする仕事は早朝で、朝飯を作る。
作業の内容は主に三種類で、盛りつけ、きりこみ(材料を着ること、業界用語なのか?)、調理だった。
今は昼で、事務所からガラス一枚隔てた調理場では、おばちゃんや若い女の子が何かを切り、何かを油で揚げ、何かを盛りつけていた。
男は一人もいなかった。
面接官に話を聞くと、男も少数だがいるという。
俺はどうしても、この仕事がやりたかった。
老人たちの飯を作るなんて、すばらしいと思ったし、何より、食事が出るらしい点が魅力だった。
しかし、俺の職歴は、飯関係の経験は無かった。
俺は例のごとく、家では料理もするし、料理学校にも通ったことがあると、面接官に話した。
一週間後に連絡すると、面接官が言った。
俺は、これから一週間の間、俺以外に面接希望者が現れないことを祈った。
↑いつもクリックありがとうございます。
