こんな夢を見た~第一夜
こんな夢を見た。
殆ど垂直の雪山を登っていた。
白く凍てついた岩盤。
体を支えているのは、岩に僅かに掛かった指先と、つま先だけだった。
登攀器具の類は、何一つ身につけていない。
わずかな岩の突起に指を掛け、恐ろしくゆっくりと吹雪の中を登ってゆく。
恐怖で震えていた。
と同時に、足下を観てみたいという欲求が襲ってくる。
それでも、決して下を観ることはなかった。
見た瞬間に、恐怖で滑落すると、何故かはっきりとわかっていた。
体一つ分の小さな岩棚が突き出ていた。
その上で、休んだ。
こんな高さの雪山を、一人で、それもフリークライミングでアタックするはずもなかった。
しかし、視界に人の姿はなかった。
俺が先頭か、最後尾かだった。
休んでいること自体が怖くなって、俺はまたゆっくりと登り始めた。
全てが真っ白だった。
ほとんど視界が利かなかった。
しばらく登攀を続けると、山頂に出た。
目の前には、さらに高い山頂が吹雪に霞んでいた。
細く急峻な稜線が、もうひとつの山頂まで続いている。
恐ろしく細い稜線で、綱渡りに等しかった。
刀の峰を、バランスを取りながら登って行くようなものだった。
一歩踏み外すと、奈落だった。
立って歩けなかった。
俺は稜線を這って登った。
雪面に顔を擦りつけながら、延々と蝸牛が這うように進んだ。
視界が開けてゆく。
山頂に手が届きそうだった。
4,5人の、人の姿が見える。
俺は、最後尾だったのだ。
薄汚れた登山服。
ゴーグルで、男たちと思われる集団の表情まではわからなかった。
山頂に着いたところで、突然、吹雪が止んだ。
目の前に広がる光景に、俺は愕然とした。
どうなっているのだ?
そこは何故か、超高層の、ビルの屋上だった。
次回は第二夜です。
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