希望に向かって走れ!
鉛色の空。
薄汚れた街並み。
何時もの風景。
何時もの一日。
朝たたき起こされ、今日のオーダーが妻から告げられた。
妻には、講座があるという。
俺と娘は、妻を講座に送り出した後、ショッピングモールで時間を潰す。
講座が終わり、妻を乗せて帰宅する。
それが妻のプランだった。
はやくしろと急かす妻の怒号をBGMに、俺は髭を剃り歯を磨いた。
車を走らせ、目的地に向かう途上、ふと、遠い昔に俺の意識は飛んでいった。
あたたかさ。
優しさ。
慈悲。
そしてかすかな、悲しみ。
浮かんた記憶。
そこには、幼い頃の俺がいた。
母の声。
父の横顔。
遠い過去、父の車の窓から眺めた空の色と、眼の前の景色が重なった。
父が帰国し、一緒に過ごす休日を俺は心待ちにしていた。
家族が揃う、ほんのわずかな日々。
楽しい時を過ごす中で、常に思っていたことがあった。
休日が終われば、父はまた仕事に戻っていく。
微かなさびしさの中、車窓を流れ行くビルやくたびれた家々を、俺はワクワクとした、希望にも似た心待ちで眺めていたのだった。
喜び。
それは、希望とともにやってくる。
輝かしい未来を、心に描く事を忘れてはいけない。
そして、今、この瞬間を大切に生きて行きたい。
苛立った妻の呟きが助手席から響いて、俺は現実に引き戻された。
俺の進む先。
フロントグラス越しに、空を眺めた。
刹那、雲間から微かに日の光が差したかのように見えた。
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