涙 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

妻の言うとおり、金がなかった。


就職活動も先が見えず、支払いは待ったなしだった。


どうすることも出来ない。


退職にあたり、幾ばくかの資金はもらえそうだったが、支払いはその前だった。


最短で仕事を決めても、どうしても、金が足りなかった。




金を借りるしかない。



しかし、借りるあてもなかった。




ふと、叔父の顔が浮かんだ。




あることをきっかけに、俺は俺で無くなった。


一人の男としての尊厳は、恥に変わった。


それは、一生消えないだろう。




そんな俺を理解してくれた、二人の叔父。


頼れるのは、その二人以外になかった。


逆に言えば、その二人以外の親類は、俺を恥辱にまみれた木偶としか見てはいないだろう。




しばらく考え、携帯をコールした。


3回。


そこで俺はボタンを押した。



携帯を握りしめたまま、しばらく待った。


俺の着信を知って、叔父がかけ直してくると思ったからだ。


しかし、携帯は鳴らなかった。





家には帰れなかった。


妻からの、人を馬鹿にしたようなメール。


それだけで、家に戻らない理由には十分だった。


町をぶらついているうちに、日が暮れていた。



二人の叔父うちの、一人。


考えた挙げ句に、携帯をコールした。


叔父はすぐに出た。




「どうした」


「いや・・・・・・特にどうと言うこともないのだけれど」


言葉に詰まっている俺に、叔父が唐突に言った。



「大変だろう?」



叔父の言葉に、俺ははっとした。


躊躇したが、思い切って俺は話を続けた。



「相談したいことがあるのだけれど」


「わかった、いつでもきなさい」


叔父は即答した。


それだけで、何も訪ねようとはしなかった。




相談できる親類が、俺にはまだいるのだ。


そう思うと、救われたような気持ちになった。


金を借りる借りないは別にして、叔父と話をしよう。


そう思った。





車の中だった。


フロントガラスの雨滴が流れ、街灯に照らされ、滲んでいる。


滲んで見えたのは、涙のせいだった。



涙は止まらなかった。



それは嗚咽とともに、ジーンズに滴った。