アルカトラズ島から~脱出不可能
妻、義母、娘が帰宅した。
しかし、夕飯になる気配もなかった。
今朝、自分で作ったうどんのみで昼は喰っていない。
腹も減っていたが、タイマーで米が炊かれている気配があったので、俺が一人、さきに喰うわけにもいかない。
妻と義母の方を観ると、テレビの相撲にかじりつき、夕飯という雰囲気ではなかった。
取り組みが終わると、妻は外出した。
飯は、妻が帰宅してからのようだった。
義母と娘が風呂に入り、出てくるとTVに向かった。
2時間後、妻は帰宅した。
すぐにTVを見始め、観たかったのであろう番組が終わると、台所に向かった。
やっと飯の支度に取りかかったようだった。
そう思た刹那、いきなり重い物が落下する音とともに、炸裂音が重なった。
義母が声を上げる。
「大丈夫なの」
「大丈夫じゃないかも」
その後、今日は夕飯は食べなくても大丈夫かと、妻が義母に言った。
台所を覗くと、鍋と一緒に耐熱ガラス製の蓋が粉々に砕け、四散していた。
俺は、箒を持ってきて、砕けたガラスを集めて袋に入れた。
妻はリビングに移動し、TVを見始めていた。
危ないから台所に行くな。明日、床を全て拭くから。
妻が娘に言っていた。
台所のガラスの破片を一通り集め終わって、俺は娘と妻のいるリビングに行った。
指先に微かな痛みがあった。
血が滲んでいる。ガラスの破片で切ったのだろう。
妻はまだ同じ格好でTVを観続けていた。
俺が娘と話していると、妻は不機嫌な表情のまま猛然と俺の前を通り過ぎてゆき、乱暴に掃除機を引きずってキッチンに入った。
ばたんばたんと音を立てながら、掃除機を使っている。
掃除機を使い終わると、行くときと同じように乱暴に掃除機を引きずって俺の前を通り過ぎていった。
掃除機の本体が逆さまになって、タイヤが上を向いたままだった。
俺は半ば呆然とし、妻を観ている以外になかった。
すると、妻の口からこんな言葉が吐き出された。
その言葉は娘に向けられてはいるが、明らかに俺への当てつけだった。
あなたは大人になってから、自分のやるべき事をきちんとできる大人にならなければいけない。
なぜ掃除機をかけなかったのかと、妻は遠回しに言っていた。
おまえが、床を拭くと言っていたではないか。
そう思ったが、口には出さずに耐えた。
俺はそのまま自室に入り、寝床に潜り込んだ。
頭痛が襲ってきて、眠れなかった。
一度起き出し、薬を飲んだ。
それでも、頭痛は消えなかった。