歌が聞こえて~涙をとどけて | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

歌が聞こえて~涙をとどけて

深夜。

バイト。

車の中。




ラジオから聞こえる歌に耳を傾けていた。

窓を開けると冷気で身震いするほどだった。

地平の少し上に、紅い月が出ていた。



「ひでえな」

「まったくですね」




いつもの愚痴が聞こえてきた。

バイトは二人一組で、俺の相棒は初老の、気のいい人だった。



「まあ、こんなもんだろうよ。俺たちバイトはな」

「まいりますね」

「どぶ掃除みたいなもんさ。社員の奴らがやりたがらない、屑仕事ってわけさ」




俺は答えず、月を眺めながら、音楽に耳を傾けていた。



いい歌詞だった。

情景が目の前に広がってくる。


降りしきる雨音が聞こえてきそうだった。


調子っぱずれの自分という言葉に、俺は苦笑していた。



風が強かった。

目の前を、枯れ葉かゴミかよくわからないものが転がっていった。



歌詞が心にしみた。


意地も夢も心の中にちゃんとある。


そんなことを歌っていた。


思い描いた風景に虹を架けたい。



歌を聴きながら、何故か涙が出そうになった。


「どうしたんだい」


隣の相棒だった。


「眠いですね。あくびですよ」


俺は溢れそうになる涙を、なんとか堪えた。