畜生と鬼畜
「母はあなたのことを嗤っている、しょうもない奴だと」
妻が言ったことだ。
それでも義母は週末、家にやってくる。
俺は朝起きると、雑用のため家を出た。
義母と妻、娘は食事をとっていた。
俺の分の膳はなかった。
帰宅すると、人の姿はなかった。猫が丸くなっているだけだった。
食い物を探したが、おかずになるようなものは無く、飯が茶碗に一杯分、残っているだけだった。
卵をかけて、喰った。朝食と昼食はそれで終わりだった。
午後四時。妻たちは帰ってきた。
どこかで食事をとっているに違いないと思うと頭に血が上りそうになった。
腹が減っていたが、飯はなかなか出てこない。
たっぷりと2時間かけて、夕食が整えられた。
作られたのは、サラダ一品だけだった。
食事中も会話は無かった。いや、俺以外の3人は楽しそうに話している。
俺は存在しないのと一緒だった。
この家での俺の扱いは、猫以下だ。妻は猫には話しかけるし、餌は万事整えられている。
頭に血が上ったまま、飯など食えたものではない。
食い終わると、自分の食器だけ洗った。妻は決して俺の皿だけは洗わない。
俺が洗わなければ、いつまでもシンクに、俺の食器は取り残されたままになる。
風呂は一番最後で、湯はかろうじて腰が浸るくらいまでしか残ってなく、垢が浮いていた。
上半身は、湯につかれないので、体は温まらない。
体も温まらないまま、布団に潜り込むしかなかった。
どこまでも、俺を惨めな気持ちにさせてくれる。
憎しみ。
それは、妻から義母に、今後拡大するのだろうか。
俺のいないところで、二人が嘲笑していると思うと、また頭に血が上るのだった。
きっと、復讐するだろう。
俺は、人では無くなった。
畜生。
扱いは、それだった。
妻が憎い。憎悪が殺意に変わるときがくるのだろうか。いや、すでに変わっているのではないか。
灯油が無くなる。雨戸の滑りが悪くなる。何かが壊れる。
すべてが俺のせいだった。
一言話をするでもなく、酷く重そうに灯油のタンクを運んだりする。
それを、これ見よがしに、義母に言う。
布団に潜り込み、目を閉じた。
湧き上がってきたのは怒りだった。
そして、惨めさに包まれた。
それでも、涙は出てこなかった。