カクテル 「マティーニ」
マティーニ。
そんなカクテルがあった。
ジェームスボンドが、タキシードを着て、単身敵地に潜入する。
ホテルか、パーティー会場か。
バーカウンターがあり、そこでカクテルを注文する。
ウォッカマティーニ。
ステアするのかしないのかは忘れたが、何となく旨そうなのだ。
缶タイプのカクテルでマティーニなどあるはずもなく、俺は一度も口にしたことが無かった。
飲みたければ自分で作ればいい。
量販店で、ジンとドライベルモットを買った。
帰宅して、早速作り、飲んだ。
・・・・・・。
ジン特有の匂いが鼻をつく。
普段は、ウイスキーか日本酒しか飲まないのだ。
ジンを味わえるほど、酒が好きではなかった。
チヤーチルだったか。
ベルモットのラベルを眺めながら、ジンを飲んでいたという。
男の酒なのだ。
俺のようなガキには、十年早かった。
「ウォッカにすればよかった」
思わず呟いて、俺はマティーニを呷った。