68円 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

68円

財布を開き、掌の上に硬貨を拡げる。

たいした重さもなく、アルミニウムと銅ばかりだった。

数えると68円あった。

妻に貸しがあったから本来ならば、缶コーヒーの一つも飲めたはずだ。


何かあると買い物を頼まれた。

金がないときは金を渡され、財布に金があると払っておいてと言う。

財布の中身を正確に把握しているのではないかと、時々思った。

そして、立て替えた金をすぐに返さない。

いつもの事だった。



コーヒーが飲みたかった。

通勤途中の道を外れ、ディスカウントショップへ行った。

聞いたことのないメーカーの缶コーヒーが55円、名前の通ったメーカーのものが、65円だった。

俺は迷う事なく、55円のコーヒーを取った。

レジの前まで来て、ふと思う。

元の売り場に戻り、65円の物と交換した。


13円でも3円でも財布にあった所で、缶コーヒーは買えないのだった。