少年たち | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

少年たち

「また会えたね」



少年に声をかけられた。


小学一年生くらいだろうか。確かにその少年に見覚えがあった。

しかし、少年が声をかけたのは、俺ではなかった。

ベンチの横で、横たわる老犬にだった。

散歩の途中、この公園でよく休む。

その時に老犬と戯れた数人の少年たちの中に、この少年もいたことを思い出す。

公園を見渡すと、ほかに三人の子供たちが遊んでいた。

プラスチック製の日本刀を振りかざし、お互いに斬り合っている。

俺が子供のときもあれで遊んだ記憶があった。

いまどきの子供も、あんなもので遊ぶのだ。

少しだけ驚き、少しだけ微笑ましく思った。

二人が一度こちらに来て、老犬に手をなめられ大声を上げたりしている。

また、駆け出し斬り合いをはじめた。

目の前の少年は、しばらく老犬を撫でたりしていたが、思い出したかのように仲間たちの方に戻っていた。

戻るとすぐに、その少年は一番背の低い少年に斬りかかった。

残りの二人も次々と斬りかかる。

背の低い少年は、仲間の輪からはじき出され、俺と対面する位置のベンチに一人座った。

少年は、それでも仲間たちの楽しそうに遊ぶ姿に視線を注いでいた。

少年の手には、何の武器も握られていないことに俺はその時気付いた。

俺はひどく感傷的な気分になった。


子供のときに、同じようなことがあったような気がした。

しかし、それがどんなことだったか思い出すことは出来なかった。



少年は、じっとベンチに座ったままだった。



しばらくすると、彼らより大きな少年がやってきて、ベンチに座った少年の所にいった。

肩から下げたバックからお菓子を取り出し、少年に渡した。

少年はそれを、上品なしぐさで食っていた。


また何か、昔のことを思い出していた。


子供のときの、ヒロシという友達。

ヒロシは俺より年下だったが、俺より背が高かった。

ヒロシがどんな顔だったか、はっきりと思い出すことは出来ない。


隣に住んでいたヒロシは、祖母と二人暮しだった。


音楽が鳴り響いて、俺は記憶の中から引き戻された。

少年たちに、帰宅の時間を知らせる童謡がこだましている。



少年の一人が声を上げた。

呼ばれた背の低い少年は、ベンチから飛び降りると仲間のもとへ駆けて行った。

二人が兄弟だった事に、俺はその時気付いた。



少年たちは、それぞれ別の方へ駆け出して行った。



日が暮れ始めている。

俺はベンチから腰を上げた。