怒れる理由 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

怒れる理由

「苛々するな本当に」

妻の声と同時に物音がした。


階段をみると、俺の弁当箱と荷物の入ったバックが投げ捨てられていた。

俺の私物は居間に置けなかった。


妻にしてみれば、ただのゴミと一緒なのだ。

帰宅し、居間の隅に荷物を置いたのがいけなかった。

疲れていたせいなのか、娘を寝かし付け後も、そのままにしてしまった。

邪魔になるような場所ではないはずだった。

それでも、妻には怒れる理由が必要だった。

どんな小さな事でも、何かしらあるのだった。

他人が家にいる。

それだけで怒れる理由は見つかる。

部屋の隅々まで見回し、俺の私物を発見し、激高する妻の姿が頭に浮かんだ。

投げ捨てられた物を拾い、自室へ戻る。

袋の中を見た。

プラスチック製の弁当箱は、無残にも割れていた。

思わず怒鳴り声を上げそうになったが、堪えた。

娘が眠っているのだった。