憎しみ
憎んでいるのは、妻の方ではなく、俺だった。
顔を見るだけでむかついた。
向うも同じなのだろう。
話をすることなどなく、罵られることもなかった。
家の仕事は片付けてあるので、罵る理由がないからだ。
ある時、妻が娘を叱り付けていた。
「何度も言っているのに、なんでわからないの」
俺を罵るときと、同じ台詞だった。
かっとなり、妻を睨み付けた。
妻の背中だった。
そして、怒りはすぐに消えてしまった。
もう我慢しない。
そう決めていたが、情けないことに、口から言葉が出ることはなかった。