人として | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

人として

風呂を洗い、妻子の布団をひくために寝室へ行った。

階下では、妻が娘に何か言っている。


水道の水は飲むな。

冷蔵庫に飲み物がある。


娘に話してはいるが、それは俺に対して言っているのだった。

直接言えばいいじゃないか。

そう思ったが、妻の顔などみたくはなかったので、かえって好都合かもしれなかった。



布団をひき終わり、寝室を出るのと同時に、何かでかい物音がした。


妻が俺を睨み付け、壁に拳を叩き付けている。

「ちょっと、話し聞いてたんでしょ」

妻は言いながら、また壁に拳を叩き付けた。

もう一つの拳は、腰に当てている。


俺は、言いようのない、恐怖を感じた。


聞いていた。

俺は、そう答えるしかなかった。

妻と目を合わせる事なく、仁王立ちした妻の横を通り抜けた。


怒鳴り声。

無視した。


妻のこのような振る舞いは、人として、間違ってはいないか。

いや、すでに人じゃないのか。

鬼。

おもったが、人として扱われていないのは、俺なのだった。



気付くと、娘が泣いていた。