付き人 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

付き人

携帯が鳴った。

直ぐに出掛けるから、準備をしろ。

妻だった。

実家に帰っていて、家に戻なり、俺という運転手を拾って出掛けると言う訳だ。

微かな怒りが湧いてきた。

「ちゃんと戸締まりしてよね」

俺は答えなかった。

「わかってるの」

苛立ったような声。

俺は、間を置いて、はい、と答えた。

途端に、通話が切れた。

妻が、来る。

俺は読みかけの小説をバックに突っ込み、流しにひとつあったコップを洗った。

気付くと、歯を強く噛み締めていた。

こめかみがひくついているのが、指で触れなくてもはっきりとわかった。

出動命令だった。

お前の付き人か何かか、俺は。

一人、呟いた。