コップひとつ 前編 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

コップひとつ 前編

目覚めると頭痛がした。

コップ一杯の水と、頭痛薬。

一気に飲んだ。

そのコップに目をやって、昨晩の事を思いたしそうになり、それを頭から振り払った。

一度深呼吸し、庭に出る。

老犬と近所を歩いた。

まだ、見慣れていないため、見る町並みが新鮮に映った。

だから、散歩も楽しかった。

気分もいくらかましになったような気にもなった。

家に戻り、老犬に餌を与える。

食い終わるまで、座り込んで餌に噛り付くその姿を見続けた。

食い終わり、顔を上げたその表情は、困ったような寂しいような、どこか元気のないものだった。



道は空いていた。

世の中は、ゴールデンウイークである。

フロントグラスに差し込む朝の日差しに、俺は目を細める。

気が付いたら、歯を食いしばっていた。

こめかみがひくついている。

もう、頭から追いやる事は出来なかった。



そして、昨晩の事が、脳裏に映し出された。