全てはそこに | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

全てはそこに

こちらが忘れていたような事も、妻は正確に覚えていた。

親戚との会話の内容である。

身内で取り交わすなんでもない話なのだが、それを持ち出し、どんなに俺が駄目な男かと、延々とまくし立ててくる。


下手に反撃しても、まず勝ち目はない。


それでも、黙って聞いていられそうもなかった。

「何で顔を合わすたびに、文句ばかり言う訳」

「言わなけりゃ、わからないからよ」

話す気力も無くなった。

妻はしゃべり続ける。

聞く気にもなれなかった。

「あんまりじゃないか」

それだけ言い部屋を出た。

俺は身構えた。

いつもなら、罵声を浴びせられるからだ。


その日は、いつもの怒声は、俺を追っては来なかった。