電話
妻の携帯に電話した。
しばらく待たされる。
10秒、いや20秒くらいか。
嫌な予感がした。
話など、したくはないという事なのか。
俺は電話を切ろうと思ってボタンに指をかけたとき、妻が出た。
いきなり、怒鳴り声だった。
「あんたは何度言っても、わからないんだから」
俺は、言葉を失った。
そんな俺を無視して、妻はまくし立てる。
「車を運転しているときに、電話されても出られないでしょう。それくらい気が付かないのあんたは」
しばらく沈黙が続いた。
そして、妻がその沈黙を破った。
「人の気持ちも、少しは考えたらどうなのよ」
電話が切れた。
車に乗っているのか、いないのか。
そんな事は、わかるはずもなかった。
妻が今、どこにいるのかもわからないのだ。
妻が家を出て、二日が経っていた。
前夜、俺は妻の実家に電話した。
たいした用件ではなかった。
口実を作り、妻の所在を確かめたいと思ったのだった。
妻は電話口に出たのだが、結局は会話にもならなかった。
怒鳴られて終わりだった。
行き先も告げずに、家を出る。
そして、何の連絡もない。
それなのに、何故俺が怒鳴られなければならないのか。
お前なんか、もう、帰ってこなくてもいい。
心の中で、呟いていた。