泣いた時
友人のところに泊まると、妻から連絡があった。
前日は、実家に泊まると言っていた。
二日間続けての外泊だった。
友人の所に、娘を連れて泊り込む。
ちょっと、考えられない様な事だとも思ったが、黙っていた。
何か言おうと思ったとき、妻の怒号が頭の中に蘇ってきたからだ。
「あんたと一緒にいたくないだけ」
その言葉が、いつまでも頭の中でこだまする。
こうやって、少しずつ離れてゆくものなのかもしれないと、なんとなく思った。
犬の餌を準備した。
器に盛って、老犬の鼻先に差し出す。
鼻を鳴らしながら、齧り付いた。
すぐに食いつくし、もっとくれと言わんばかりに、俺に鼻先を向けてくる。
俺は、一度頭を撫でて家に戻った。
今度は自分の番だった。
豚肉を取り出し、醤油とみりんに浸して焼いた。
それを飯の上に載せて、喰った。
そのとき、野菜も食わなければいけないと、何故か思った。
近頃、体調が優れないからそんなことを思い立ったのだろうか。
普段なら、肉を食ってそれで終わりだった。
冷蔵庫の中を、物色する。
奥の方から、缶チュウハイが出てきた。
妻が自分で飲むために買ったものだろうと思い、元に戻した。
食事を終えて、ぼんやりとTVを眺めた。
少女が死を宣告される、悲劇的なドラマが流れていた。
気が付いたら泣いていた。
虚構の世界に涙し、己の事に対しては、白けてしまっているのか。
そんな俺は、どこか歪んでいるのではないか。
この前泣いたのはいつだったか。
しばし思いをめぐらせた。
半年くらい前か。
それとも、ひと月か。
その時の俺は、悲惨なニュースか何かを見て泣いていたのだろうと思った。