袋小路 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

袋小路

二日間、妻の顔を見る事がなかった。

帰宅すると、妻の姿はなく、メールで実家にいる、明日帰るとだけ連絡があった。

結局、その日は帰って来る事はなく、次の日も同じだった。

飯は冷蔵庫にある物を適当に喰った。

正直な所、妻がいないとほっとした。

一人で家にいるときだけは、顔を合わせるたびに、罵られることもないからだ。


洗濯物が溜まっていた。

その日も雨が降っていたので、どうしようかと迷ったが、明日、身につける下着もなく、洗濯機を回すことにした。

洗濯機が回り終えた頃、妻と娘が帰宅した。


無言で玄関を上がり、不機嫌な溜息を漏らす。

さすがに、頭に血が上った。

二日ぶりに顔を合わせて、これはないだろうと思ったのだった。

「なんで、怒っている訳」

「一緒にいたくないからよ」


もう、反論する気にもならなかった。

いくらあがいても、どうにもならないのだ。

そんな思いに、駆られただけだ。


洗濯物を持って、寝室へ向かった。

妻が俺の後を追って来て、怒鳴り声を上げた。

「私達の寝室に、洗濯物干さないでよ」


俺は黙ったまま、籠いっばいになった洗濯物を持って、自室へ入った。

部屋干しする場所もなく、明日身に付ける分の下着だけ、テーブルの上に広げた。

妻が仕事に出掛けた後、娘と風呂に入った。


娘の顔を見ていると、叫び出したいような気分になってくる。

「お父ちゃんのこと、好きか」

娘は小さくうんと答えた。

ひょっとして、と思い、違う事を尋ねる。

「オバケは、好きか」


娘は小さくうんと答えた。