フラストレーション 2
朝から、顔を合わせるたびに罵られた。
俺はたまらずに、自室に非難した。
この家に、居場所などなかった。
いつもなら、庭でぼんやりと蟻が地面を遭うのを眺めていたり、居間で所在無くおどおどしていることが多かった。
そんなことにも、いい加減疲れ果てた。
もう、妻との生活は成り立たないかもしれないと、思う。
案の定、自室に篭っていれば、また文句だった。
妻の怒鳴り声が、聞こえる。
「部屋に引きこもって、パソコンばかりやって。いい気なものよね」
怒りが、こみ上げて来た。
パソコンなどやってはいなかった。
ただ、暗い部屋でじっとしていただけだった。
俺の顔を見れば、文句を言う。
目の前にいなくても、腹を立てる。
俺はいったい、どうすればいいのだ。
激情に駆られるまま、妻に反論した。
「朝から、晩まで文句ばかりで、いったいなんなんだ、これは」
「頭にくるからよ」
妻は、きっぱりと言った。
「あんたには、騙されたわ。喰えなければ、バイトでも何でもして働くと、わたしの両親には言った筈でしょ」
それは不可能だった。
勤務時間が不規則で、バイトなど出来るはずもなかった。
俺は、黙って妻の話を聞いた。
「○○も、おとうちゃんのような男に騙されないように気を付けなさいよ」
(○○は、娘の名前)
娘は、家の中を走り回っている。
何が起こっているか、わかっていないらしかった。
「もう、別れよう。一緒にいる意味などもう無いから」
その言葉で、反論する気も、無くなった。
妻は、俺の甲斐性の無さに腹を立てているのだった。
庭に出た。
すでに、日が暮れていて肌寒い。
庭にいる老犬に、声をかけた。
おとなしく、俺に従って、犬小屋に入る。
普段は、そんなことは無い。
嬉々として尻尾を振り、じゃれるように俺から逃れようとするのだった。
ひょっとして、妻との口論を聞いた老犬が、俺を気の毒に思ったのかもしれないと、なんとなく思った。
バイトについて、考えていた。
土日なら出来る。
明日、職安にでも行こう。
そんなことを考えながら、俺は玄関を開けた。