最後のひとつ | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

最後のひとつ

いつも通りの朝だった。

妻は冷蔵庫を覗き込むと、俺を激しく罵った。

何故、食べ物を少しずつ残す訳、腐らせてしまうのはもったいない。

話は過去に遡っていった。

そして、俺の育てられ方が悪いからこうなるなどと言っていた。

さらに、シチューを腐らせたことをまた言われた。

一緒になったばかりのとき、鍋に火を入れなかったために、それは腐ってしまったのだった。

そのときの俺は、笑っていたという。

そんな記憶は、俺にはなかった。

結局は、俺の仕事が新たにひとつ加わったということを、妻は言っているだろう。

冷蔵庫の中身をチェックし、悪くなりそうなものを喰う。

妻達のために、残しておこうと思うのは止めにしよう。

そうでなければ、食物は残ってしまい、最後は腐る。

皿の上に残った最後のひとつ。

それに、手を伸ばすことが出来ないのだった。

俺はいいから、だれか食べなよ。

いつもそう思ってしまう。



外に出た。

蝉の鳴き声と、聞いた事のない鳥の声が聞こえた。

木を見上げてみると、見たことの無い薄茶色の鳥が、せわしなく頭を動かして鳴いている。

視線を地上に戻した。

そして俺は、庭の雑草を刈り始めた。