今夜、携帯より | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

今夜、携帯より

布団に横たわり携帯を開いた。

暗闇では明る過ぎる液晶画面をみつめながら、俺は今、緑色に光るボタンを何度も押して文章を書いている。

妻達の寝室から、楽しそうな声が聞こえてきた。

数分前まで俺はそこにいて、娘を寝かしつけていた。

そして、妻が帰宅するまでに娘は眠らなかったのだった。

二人でいるときは、俺に抱きついてきたり、何かを言って笑ったりしていた。

妻が帰宅したことを知ると、興奮して、おかあちゃんと大声で叫び、扉を叩いていた。

乳幼児にとって、母親の存在は絶対であると何かの育児書で読んだ。

母親以外、他人であろうと父親であろうと一緒であると。

そして、娘はもう乳幼児ではなかった。

寝室からはもう声は聞こえない。


外からは虫の鳴き声と、幹線道路からトラックの唸り声が低く響いてるだけだ。

疲れていて、早く眠りたいのに、何故か頭だけが覚醒している、嫌な状態だった。

いつまでも訪れない眠気に少し苛立ちながら、俺は送信ボタンを押した。