ノンアルコールビール~感謝の言葉
弁当を詰め込み、家を出た。
車の中が冷えるまで、少し時間がかかった。
それくらい、暑いという事なのだろう。
小さな車内なので、いつもならすぐに冷えてしまう。
それでも、気分は悪くなかった。
頭痛薬もゆっくりと効き始めている。
薬のせいだけなのか。
それだけではないのかもしれない。
少し時間があったので、途中、コンビニに寄って漫画雑誌を立ち読みした。
それから、店内をぶらつく。
喉が渇いていて、何か飲みたいと思った。
思わず、ドリンクの棚に手が伸びていた。
ノンアルコールビール。
130円。
俺は、手を引いて車に戻った。
はっとして、携帯を開きメールを打った。
「おかずありがとう。感謝です」
妻に送信する。
妻はこれを読んで、どう思うのだろう。
しばし考えた。
職場に着いて、水を飲んだ。
お茶のサーバーが設置されていて、冷えた水も飲むことが出来た。
荷物をロッカーに放り込もうとしたとき、俺は床に光るものを見つけた。
100円が落ちていたのだった。
俺は周囲を見回して、すばやくそれを拾った。
あの時、コンビニでノンアルコールビールを買わないでよかったと思った。
これで本物の酒が買える。
少しも悪びれることなく、俺はそんなことを考えているのだった。