深夜の葬儀 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

深夜の葬儀

深夜、誰もいない住宅街を、俺はひとり歩いていた。

青白い外灯に照らし出された、一軒の小さな平屋建てにたどり着いた。

ブロック塀に囲まれていて、道側の窓が全部開け放たれている。

やはり、寒々とした青白い光が漏れていた。

叔母が立っていた。

喪服を着ている。

誰か死んだのか。

深夜に葬儀とは、おかしな話だった。

それでも、あまり深くは考えなかった。

そのまま家に上がった。

和室が二つ並んでいる。

一つ目の部屋に、娘がいた。

いつものように、こちらを見て笑っている。

妻はすでに来ているのか。

そんなことを考えていると、背後から声がした。


祖母の声だった。


俺の名を呼んでいる。

そして、これは祖母の葬儀だと何故か確信したのだった。

奥の部屋に、祭壇がしつらえてあった。

遺影をみて、はっとした。

喪服を着た祖母の姿が写っているのだが、何故か鼻から下しか写っていない。

口だけが写っていて、その上は枠からはみ出ているのである。

顔が映っていない状態と同じだった。

へたくそな写真だと思うより、恐怖に駆られた。

どうしても、写真から目を離すことが出来なかった。

そして、その写真の、わずかに写った顔の部分が、徐々に俺の顔に変わっていった。

胸に大きな衝撃がきたように思えた瞬間に目が覚めた。



悪夢。

自分の葬儀を、見たような気分になっていた。

そこに、妻はいなかった。

娘がこちらを見て笑っていただけだ。

そして、祖母は8年前に亡くなっている。



死んだ方がましだと、なんとなく思う時がある。

本気ではない。

自虐的に夢想するだけだ。

だから、こんな夢を観たのか。



起き上がり、そのままベッドの上に座って、じっとしていた。


体中の、節々が痛かった。


目を閉じる。


娘の笑顔が、いつまでも頭の裏側に張り付いていた。