幻の光 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

幻の光

深夜、妻と娘を迎えに駅へ行った。

何時頃、迎えに来れる。

電話の声はちょっと明るく感じられた。

久しぶりに、話しでもしたくなるような気分になった。

しかしそれは、用事を頼む時の媚びに過ぎなかった。

二人乗れば一杯になるような小さな車の内を、俺が手早く片付けている間、妻はずっと不機嫌な溜息を漏らし、眉間に皺を寄せていた。

無言で帰宅した。

妻が寝室へ入るなり、声が聞こえてきた。

布団がひきっぱなしだから、ひく手間が省けていいわね。

娘に話すように言いながら、実は俺に言っているのだと思った。

朝起きて、家を出た。

途中で水を買って、頭痛薬を定量の倍飲み込む。

一度、妻から電話があったがそのままにした。


車の中でじっとしていた。

甲斐性無し。

妻の言葉が頭の中に沸き上がる。

安い給料で家族に良い生活もさせられずに、家に居れば妻を苛々させる事しか出来ない男。

考えただけで、絶望感に苛まれる。



今、この文章を携帯電話で書いている。



現実から逃げ出したかった。

何か、読みたい。

ふと、幻の光が読みたいと思った。