俺は~
レンタル屋に行った。
中古CDが、200円だった。
ワゴンの中を、漁ったがやはりめぼしい物は見当たらない。
200円、だもんな。
思わず、呟きそうになった。
それでも、かごの中に詰め込まれたCDケースを指でなぞった。
指が止まる。
よく見ると、尾崎豊のトリビュートアルバムだった。
車に乗り、カーオーディオにCDを押し込む。
2曲目のミスチル以外、聴いたことのないミュージシャンだった。
それでも、耳に心地よい。
4曲目。
I Love You
宇多田ヒカルが歌っていた。
切な過ぎる歌声。
不意に視界がぼやけた。
涙だった。
ガキのころを思い出したのだろうか。
校舎のガラスも割らなかったし、バイクを盗んだりもしなかった。
むしろその逆で、好きな子に声もかけられずに、ひとり身を捩っていた。
そんな気の弱い、少年だったと思う。
こうして、大人になった今も、大して変わっていないのかもしれない。
初めて付き合った子は誰だったか。
考えても、はっきりとは思い出せなかった。
言ってみれば、その程度の恋だったということか。
学生時代、ダンパ(ダンスパーティー)で知り合った子と付き合った。
クリスマスを一緒に過ごしたり、彼女の部屋で一緒にご飯を食べたりした。
卒業を迎える前に、連絡が取れなくなった。
それで終わりだった。
ひょっとして、彼女と一緒にこの曲を聴いていたのか。
急に、シェリーが聴きたくなった。
俺には、お似合いの曲だ。
~俺に愛される資格はあるか~
さびの部分が、頭の中ではっきりと聴こえた。
尾崎豊 トリビュートアルバム
BLUE~A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI