花火
妻は、出掛けていった。
習い事をしていて、それに関係する集まりに参加するためだ。
娘は途中、人に預けるという。
家の中を掃除しておくように、妻から言われた。
掃除をし、昼飯を作り、洗濯物を干した。
風がほとんど、吹いていなかった。
たまらずに、エアコンをつける。
本を読んだだけで、時が過ぎ去ってゆく。
妻が、娘を連れて帰宅した。
「エアコンなどつけないで、窓を開けておけばいいでしょ」
それが、最初に発せられた妻の言葉だった。
エアコンを消し、窓を開け放っているところに、2度目の言葉が発せられた。
「ほんと、何にもしないんだから」
「私が草取りするから、あなたが何か食べるもの作りなさいよ」
目障りだから、草取りでもしていろ。
そう聞こえた。
黙って、外に出た。
やはり、反論しようという気は起きなかった。
何をやっても、無駄だ。
そんな失望感が、湧き上がってきただけだ。
草取りをした。
いつの間にか、日が暮れていた。
食事を終えて、洗濯物を取り込むため外へ出た。
妻と娘が、花火をしていた。
娘のはしゃぐ声が、聞こえてくる。
初めての花火だな。
なんとなく、思った。
布団潜りこんでも、娘のはしゃぐ声が聞こえてきた。
眠れそうもなかった。
汗で体がべたついている。
今夜も、風は吹いていなかった。