謎の、飲み物
Tシャツが、汗で体に張り付いていた。
車のエアコンが効かない。
窓を開け放ち、風を入れる。
それでも、汗は引かなかった。
ふと、数日前の出来事を思い出していた。
妻から新聞広告を手渡された。
中古車の合同展示会である。
3人で出かけた。
会場を見て歩いても、大して安い車はなかった。
何かいいのあった。
そう妻に声を掛けられ、一台の軽自動車を妻に見せたのだった。
年式が古いから、やめた方がいい。
今は我慢して、来年、もうちょっとよい車を買ったほうがよいのではないか。
それが妻の意見だった。
安ければ何でもいい。車は年式ではなく走行距離だ。
そう思ったが、黙っていた。
この会場の中では、これが一番よかった。
俺はそれだけを言い、会場を後にしたのだった。
俺は、開け放たれた窓から腕を出した。
その腕だけは、涼しい。
何件かのディーラーを回った。
そうしているうちに、どうやらエアコンのガスは完全に抜け切っておらず、ちゃんと循環していることがわかった。
そして、ガソリンスダンドへ行きガスの値段を調べた。
妻に電話をする。
「エアコンのガスを補充するけど、いい」
「今日じゃなきゃだめなの」
「わかった」
それで、話は終わりだった。
すぐに、妻からメールが届いた。
ガソリンスタンドは、スキミングされる恐れがあるから、カードで買わない方がいいというような内容だった。
ここ数日、暑くてかなわない。
だから、今日、エアコンを何とかしたかった。
そういう内容のメールを返信した。
ちょっと車を運転しただけでも、汗が染み出してくる。
仕事場に着く頃には、軽く雨にでも降られたように、シャツは濡れているのであった。
いつものハンバーガー屋で涼んだ。
ソフトクリームをストローで飲んでいるようだ。
そんなことを考えていると、またメールが届いた。
「明日から涼しくなるわよ」
俺は、声をあげて笑っていた。
窓の外を見た。
明日は、雨かもしれない。
そう思いながら、ストローを咥えて吸い込んだ。
なかなか、吸い込むことが出来なかった。