写真 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

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うんざりだった。

俺が作った飯も喰わないし、風呂にも入りたがらない。

ママ、ママと大声で泣いている。

焦躁に駆られながら、無理矢理風呂に入れた。

風呂から出ても、泣き止まなかった。

どんな言葉をかけても、ママのいない淋しさは消えないのだろう。


「今日は何したの」

そう声をかけると、何故かピタリと泣き止んだ。

そして、お友達と遊んだことなどを、話してくれた。

何故泣いていたか、やっとわかった。

ママがいないからではなく、ただ眠いから泣いていたのだった。


小さな明かりを点けて、布団の上で大の字になる。

二人で天井を見上げていた。

「じいちゃん、ばあちゃんだ」

娘が指を突き上げて、言った。

壁に、二つ並んで掛けられた、親父とお袋の写真である。


「じいちゃん、ばあちゃん笑ってる」

また、娘が言った。

「じいちゃんばあちゃん何か言ってた」

聞いてみたが、写真に向かっておやすみなさいと手を振りながら言っただけで、訳のわからない事を喋り続けていた。


このみじめな有様をみて、親父たちは本当に笑っているのかもしれない。

二つ並んだ写真を見つめながら、そう思った。